416 :えっちな21禁さん :04/04/21 20:42 ID:1my7cryD
俺と彼女は小学校の頃からの幼馴染だった。
いや、それ以上の、何て言うか、兄妹みたいな感じだった。お互いの家族も生まれた時から顔見知り。
高校を出る頃には既成事実ではないけど、『貴志君と恵理が結婚するのが楽しみだわ…』なんて、
彼女の母親がのたまうほど、親密な関係だった。…って言っても、Hは無し。キスはしてたけど。
初めてHしたのは大学二年の冬。一緒にスキーへ言った時。二人だけで行きたかったのに、
両家族まで付いて来て。ちょっとした家族旅行だった。俺も彼女も一人っ子で、親馬鹿なんだろうか…。
三部屋予約取って、俺は恵理と一緒の部屋だから、と宣言すると、俺と彼女の母親に冷やかされた。
今となっては、何と言うか…いい思い出。で、彼らの期待に応えて?初めて結ばれた。正確には、
三泊四日の旅行の、三泊目の夜なんだけど。一日目、二日目は全然入らなくて、彼女もすごく
痛がってて…血は出なかったけど、初めてだった。俺はそう信じてる。それに、その頃の彼女は、
俺に嘘をつける程、器用な女じゃなかったから。
417 :えっちな21禁さん :04/04/21 20:53 ID:1my7cryD
俺と彼女は別々の大学で、俺は三流大学の経済学部、彼女は中堅所で仏文学を専攻していた。
ちなみに、俺よりも彼女の方が頭が良かった…。当然、就職でも差が付いた。
俺は小さな機械製作所の営業兼事務として、彼女はネットベンチャーと呼ばれる企業へ。
就活で腐り切ってた俺に、彼女は優しく言ってくれた。『しばらく働いたら、何か資格でも取ればいい』って。
さえないサラリーマンになった俺と、美人で、頭もいい彼女…釣り合わないなァ、なんて、自分でも思ってた。
彼女と幼馴染で、一緒にいる時間が彼女の親の次に長かった存在だから、こんな俺と付き合ってくれて、
好きになってくれたんだ。そう信じてた。俺は絶対、彼女を幸せにする、誰よりも…本気でそう、心に誓ってた。
大切な彼女だから、Hも恐る恐る、い、いいかなー?なんて、お伺い立てて、前戯も本当に延々と…みたいな。
とにかく、俺は大切にしてた、彼女の事を。
418 :えっちな21禁さん :04/04/21 21:04 ID:1my7cryD
お互い社会人になって、五年が過ぎた。俺も彼女も24歳になってた。
ある日、俺は彼女の父親から居酒屋に誘われた。初めて俺の携帯に着信が入って、
誰だろう、見慣れない番号だな…なんて、出てみると、彼女の父親。知った顔だけど、
その時は何故か目茶目茶緊張した。二人だけで飲む酒。味なんて覚えてない。
何を食べたのかも覚えていない。静かな時間が流れたもそんな気がする。
419 :えっちな21禁さん :04/04/21 21:05 ID:1my7cryD
他愛も無い会話の後、彼女の父親は一言、『そろそろ嫁に貰ってくれないか』と言い、
そして軽く頭を下げた。俺は泣いた。恥ずかしいけど、鼻をすすり上げていたと思う。
涙が止まらなくて、何度も何度も、絶対幸せにします!なんて言ってた。その日、
俺は家に帰ると両親にこの事を報告して、これからも彼女を宜しく、と頭を下げた。
確か親父は『任せろ』、お袋は感動して目が潤んだまま、何もいえなかったと思う。
その後、今度は彼女の家に行って、改めて挨拶した。先程はどうも、見たいな感じで。
彼女はまだ帰って来てなくて、俺はさっきまで一緒に飲んでた彼女の父親と、母親に、
『恵理と一緒にさせて下さい』みたいな事を言った。婚約宣言…何か恥ずかしい、今思い出すと。
421 :えっちな21禁さん :04/04/21 21:21 ID:1my7cryD
後ろから親父とお袋もついて来て…いや、まさか後ろから付いてくるとは
思ってなかったんだけど、家が近過ぎて。いても立ってもいられなかったんだと思う。
三人で彼女の実家に上がり込んで、五人でビールを飲みながら昔話を…いや、ただの羞恥プレイでした。
俺が覚えてない事を次から次へと、コイツら…俺と彼女の秘密の暴露大会を始めやがる。
『実は貴志君と恵理が○○でキスしてるの知ってたの』とか、お袋と彼女の母親が喋る喋る。
俺は、彼女の父親に聞かれたくない話ばかりで、もう何処かへ逃げ出したくて。来るんじゃなかった、と
少し後悔したり。
422 :えっちな21禁さん :04/04/21 21:22 ID:1my7cryD
夜中の12時過ぎに、彼女も帰って来て、『あれーどうしたの?みんなで』と聞かれたと思う。
席を外して、玄関の所まで連れて来て、小声で今までの経緯を話したら、すごく喜んで…でも、一番最初に
私にちゃんと言って欲しかった、と言われて、そりゃそうだよなァ…と少し後悔したり。
今更、面と向かって言うのも馬鹿と言うか、恥ずかしかったけど、『結婚しよう』と彼女に言ったよ。
声は上ずってたと思う、間抜けだ俺…。彼女は『幼稚園の頃から貴志のお嫁さんだったよ…』って。
俺は思い切り抱き締めてた、彼女の事。…それも全部見られてたけど、皆さんに。後々まで話の種にされるのが辛い。
423 :えっちな21禁さん :04/04/21 21:37 ID:1my7cryD
俺はその頃が一番幸せでした。本当に幸せだったよ。
月給26万程度、ボーナスカットも当たり前だったけど、彼女と一緒にいられるだけで
幸せだった。何て言うか、彼女の事を考えるだけで楽しくなれて、俺は思春期?みたいな。
マリッジブルーの逆バージョン、まさにハイな感覚。どっちの家に住むかとか、新しく借りるか、とか、
色々考えてた。その頃、彼女はいつも仕事が長引いて遅かったけど、全然気にしてなかった。
マメにメールはくれるし。全然怪しい事もなかったんで。
425 :えっちな21禁さん :04/04/21 22:09 ID:1my7cryD
俺が彼女を意識し始めたのは小学校一年から。意識って言っても、あーいるいる、みたいな。
存在の認識って言うのかな。でも、彼女は幼稚園の頃から俺に目を付けていたんだと。
俺と恵理って幼稚園の頃、一緒の組じゃなかったよな?何で俺の事知ってんの?って聞いたら、
俺は全然覚えてないけど、色々俺との思い出とやらがあるらしい。俺は全く覚えてないから、
でも、覚えてない、なんて言うとマジ切れされそうな雰囲気だったんで、ああ、そうだよなーなんて、
覚えてるフリしてやり過ごしたけど。そんなに一途に想われてたなんて…とまあ、少しノロケてみました。
427 :えっちな21禁さん :04/04/21 22:17 ID:1my7cryD
婚約してから、安心したのか、少し会う機会の間隔が長くなってて。
いや、彼女の仕事が忙しくて。お互い仕事もあるし、無理に時間作って会わなくても、
この先嫌って言う程一緒にいなくちゃいけないんだから…みたいな。俺は安心しきってた。
ちゃんと指輪を渡さないと…なんて考えてて、こっそり宝飾品店巡りしたりしてて。
店員さんと話すと緊張しますね、アレ。もう、話し掛けたら絶対買わないといけないんじゃないか、って。
俺は元々気が弱いんです、ええ。しかも優柔不断だし。結局買えなくてマゴマゴしてたんだけどさ。
429 :えっちな21禁さん :04/04/21 22:34 ID:1my7cryD
10月の彼女の誕生日が迫ってた。俺はまだ指輪すら買えなくて。
もう、いっそ彼女自身に選ばせるか、って腹をくくってた。俺のセンスだとダメっぽいし。
一生大切にしてほしいから、彼女の選んだ物で…って。その時、実は、婚約指輪兼結婚指輪って
考えてました。セコイ男でスマソ。でも別々に二個買うのもなーなんて思ってて。
で、彼女の誕生日。この日は早く仕事切り上げてくれよな、って言ってあって。ドトールで待ち合わせ。
俺はいつも待たされる。遅っせーとか、言いながら。彼女はゴメーン、なんて可愛く謝って。…馬鹿ップルでした。
彼女がポーチをパカッと開けたんです。そしたら、少し大きめの、水色の紙が見えた。水色の紙袋が折りたたんで、
入れてあったんだと思う。間違いなくティファニー。つい聞いちゃったんだよ、ティファニーの袋?って。馬鹿だな俺。
430 :えっちな21禁さん :04/04/21 22:41 ID:1my7cryD
彼女は動揺したよ。俺よりも気が強くて、絶対尻に敷かれるよね、なんて彼女の母親からも言われてて。
俺も、まあ、彼女がしっかりしててくれて、リードしてくれるからいいかなーなんて思ってて。
そんな彼女が少し慌ててた。でも、今思うと、ポーチに入れるには無理があるサイズだよな、紙袋。
畳んで無理矢理押し込んでるって感じ。で、俺は大馬鹿野郎で…期待しちまったんだよ、
それが俺へのプレゼントかってw 彼女の誕生日に何故、彼女が俺へプレゼント… orz
プレゼント交換?とか、今思い出すと馬鹿馬鹿しいけど、何でかそう勘違いしちゃたんです。
何々?見せて…って、追求しちゃったのさ。彼女は、紙袋を取り出した。でも、何か行動が変。
テーブルの下に手を潜らせようとしてモゾモゾ。紙袋の中身を出そうとしてるのがバレバレでさ。
433 :えっちな21禁さん :04/04/21 22:51 ID:1my7cryD
はい…って、手渡されて、紙袋はやっぱりティファニー。
ティファニーいいよねー…なんて言ってる俺。実はティファニーのシルバーリングもいいかな、
なんて思ってて。でもその時は、買わなくて良かったと思ってた。だって彼女がティファニーの紙袋を
持ってるって事は、ティファニー以外の、意外性のある奴でないとダメだ、みたいな。ちょっとホッとしてて。
あー中身を俺にくれるのか???なんてドキドキしてて。でも、何となく、くれる気配がないんで、聞きました。
中身は?って。固まってたと思う、彼女。あー、とか、うん、とか。変な頷きの後、ゴメンね、ゴメンね、と繰り返して。
434 :えっちな21禁さん :04/04/21 22:53 ID:1my7cryD
俺もよく分かんなくて、まあいいか…と。で、指輪何欲しい?俺、自分で買おうとしたんだけど、分かんなくて…
みたいな話をして。喜んでくれた、その時は。『ホントに???』って。ドトールを出て、彼女と指輪を
買いに行きました。カード使ったけど、限度額ギリギリの18万。安いのか高いのかよー分からん。
オーソドックスな感じの、普段でも付けていられる様な、小粒のダイアモンドリング。彼女はそんなに
細い指じゃないんだけど、すごく似合ってたよ。色白な方だったし。
435 :えっちな21禁さん :04/04/21 23:00 ID:1my7cryD
さっそく指輪をはめて、わー…とか言ってる彼女に萌えました。
やっぱり可愛いわ、この子って。ご両親にも報告して、もう結婚秒読みって感じでした。
いや、まだ具体的に日取りとか、全然決めてなかったんですけど。
年明けて、春にでもどう?みたいな。かなりのんびりしてました。どうせ逃げていくもんじゃないし。
それ以前に、お金が無くて。さすがに親に全額負担はさせられないし。俺の貯金は二桁しかなくて…。
お金が貯まり次第ねー、なんて、冗談を言い合ってました。
442 :えっちな21禁さん :04/04/21 23:17 ID:1my7cryD
スマソ…
11月、俺は初めて彼女の会社に呼ばれました。今まではロビーまでしか入れなかったけど…
って、ズカズカ入ってく勇気もないし、迷子になりそうだし。警備員いるし。
仲人さんになる人が、彼女の上司だそうで。ご挨拶です、仕事の合間を縫って、時間作って。
おー、やっぱスゲー、と感動でした。オフィスの天井がウチの会社よりも高い高い。ああ、やっぱ違うな、
なんて、変な所で差を見せ付けられました。応接スペース?みたいな、仕切りのある所に通されて、
ぎこちない挨拶をしました。仲人の上司は、30台後半かな、結構若く見えましたよ。俺よりは格好いいし。
俺と彼女は並んで頭を下げて、まだ日取りは決まってないんですけど、仲人の予約をw とか何とか。
快く引き受けてくれて良かった。ま、部下から頼まれて嫌とは言えないと思うけど。職場の規模と言うか、
俺のトコはショボくて、披露宴の時の事を考えると、やっぱり頭数の揃う彼女の会社の人間の方が
頼れるって事で。仲人。
444 :えっちな21禁さん :04/04/21 23:26 ID:1my7cryD
俺の上司からは嫌見を言われましたけどねw
何で向こうの上司?って。仲人って、そんなにやりたいもんなのか。親戚って言うか、
親父の兄も仲人したがってたらしい…。誰でもいいんですけど。
俺が考えるよりも、周りはドンドン動いていて。仕切られてました、お互いの両親と、彼女に。
俺は毎日、普通に会社に行ってて、でも、話は前に進んでいて。彼女と会うのは相変わらず
遅くなってたけど、嬉しそうに話す姿を見てるだけで嬉しかった。楽しかった。
たまに早く、彼女が帰れる時は、彼女が俺の会社まで来てくれて。
俺は待たせるのが悪くて、残務もそこそこに切り上げてたり。上司も大目にみてくれました。
でも、俺は彼女の会社で待った事はなかった。仕事は結婚しても続けるって事で、話はついてて。
だから、年が明けて、春になって、結婚しても、別に何も変わらないと言えば変わらない。
住まいは、お金が勿体無いから、荷物は俺の家、体は彼女の家w みたいな。そんな話で。
445 :えっちな21禁さん :04/04/21 23:34 ID:1my7cryD
考えてみると、俺が待ってた事は無かったんです。大学時代も含めて。
驚くだろうな…なんて、悪戯心出して、夜中11過ぎぐらいですか、ビルの前に立ってました。
出て来た…と思ったら、仲人の上司と一緒でした。俺はかなり動揺して、声とか掛けられなかったんですけど、
って、別に何も無くて。会社前で別れてそのまま彼女は地下鉄の改札を過ぎて。
まあ、彼女の尾行なんてする気はなかったんですが、声を掛けるキッカケを失ってしまって。
一瞬でも彼女を疑った俺自身に鬱々としながら、どこで声を掛けようかな…とタイミングと距離を測ってました。
ストーキングはドキドキしますね、アレ。尾行って、バレないかハラハラですよ。変なドキドキ…
447 :えっちな21禁さん :04/04/21 23:40 ID:1my7cryD
結局、乗り換え乗り換えで、家のある駅まで来ちゃいました。
俺は少しだけ、ストーカーの快感を味わった様な気がします。そんな物は理解したくないけど。
バレない様に彼女の後をつけてました。もう、ここまで来ると声を掛けられなくて。
彼女が家に着いたら、遅れて行こうかな、と。外灯もポツポツ、所々消えてたりで、結構暗い所は暗いですよ。
女一人で歩くのは怖いな…なんて、新たな発見と言うか、妙な防犯意識と言うか。もっと早く、
一緒に帰れば良かったかなーと。いや、尾行しながらそんな事考えてもね、俺。
で、彼女がアパートに入って行った訳です。まだ新しいアパートの二階でした。は???何で、って、
一瞬、お前どこ行くんだよ!!!みたいな。
450 :えっちな21禁さん :04/04/21 23:46 ID:1my7cryD
仲人さんはいい人でした。後々、俺の相談にも乗ってくれて。お金までくれて。
本当は彼女と友達OL?の確か4人でキャアキャア言いながら出てきたんだよ…会社。
キャアキャア…いや、そんなに騒がしい訳でもないんですが。
俺、場違いな気がして声掛けられなくて。バイバーイ、とか言いながらそれぞれ電車乗ってったけどね。
451 :えっちな21禁さん :04/04/21 23:51 ID:1my7cryD
俺は足音を忍ばせて、階段を昇りました。
別に足音を忍ばせなくてもいいんですけど。コンクリートだし、音はあまり出ないと思うんで。
表札にはローマ字のパネル?で、Nishimura と。
西村…誰???俺は全然理解出来ませんでした。本当は、何が起こってるのか理解出来たと思う。
でも、思考を停止したんだと思う、脳が強制的に、フリーズって。俺はトボトボと帰ったよ、家に。
風呂に入って、ベッドに潜り込んで、それでも、西村西村って、頭の中を西村が駆け巡ってた。西村って誰?
453 :えっちな21禁さん :04/04/21 23:58 ID:1my7cryD
俺はずっと西村ってのが気になってて。でも、住んでる場所は知ってても、どんな人かも知らないし、
誰に聞けばいいのか分からなくて。彼女にも聞けなくて、ただ黙ってた、我慢していた。
でも、やっぱり知りたくて、まずお袋に聞いたんだとげね、西村って知ってる?って…聞くなよ俺。
知らない、誰それ?って、知りませんでした、お袋。当然です、俺が知らないんだから。
その週末、彼女の家に行った。彼女とは普通に話せた。俺は演技派かも知れない。
彼女が浮気してるかも知れないって時に、でも、もしかして西村ってのは女の子で、実は大親友…とか、
そんなオチだとしたら、うっかり追求して恥をかくかも…なんて恐怖もあって。あの日から、って、
確か火曜日の事だったんだけど、そりから3~4日もすると、もうあれは女友達の家だったんじゃないか、
俺の嫉妬深さが被害妄想を招いているんじゃないか、なんて、そこまで考えてて。
少し楽になりたかったのかも知れない。
455 :えっちな21禁さん :04/04/22 00:09 ID:7VLLOLec
彼女は、ちょっと待ってて、買い物に行って来る…って、父親の車で行ってしまった。
家には、俺と母親。未来のお母様…。二人だけになると、何か気まずい、とまではいかないけど、
落ち着かない。俺は元々人見知りするタイプなんです。で、彼女の母親も俺のそう言う所を知ってるから、
いつも話し掛けてくれる、先に。一緒に行けば良かったのに…って、お母さん、俺は邪魔ですか…。
俺は、彼女の母親に、極力、動揺している自分を知られたくなくて、普通に聞こうとしたんです。
西村さんって知ってます?って。『あー…西村君?』 おー…知ってるよこの人。俺は『どんな人ですか?』
って聞くと、同級生じゃない?お母さんと友達なのよー、と。…男でした。小学校3年・4年の同級生。
でも、幼稚園の時も同じ組だと。わざわざ卒業アルバムまで持って来て。この子この子ー…とか。
子供の写真見せられてもね、今現在のイメージなんて湧かない。
457 :えっちな21禁さん :04/04/22 00:17 ID:7VLLOLec
間違いない、コイツと浮気してる…俺はもうグダグダです。
キスしてる現場とか、Hしてる現場とか、いや、コイツの顔すらガキの写真でしか見てないけど、
心臓を鷲掴みにされた様な…今、心電図取ったら間違いなく不整脈出るよ、みたいな感じ。
もうね、問い詰める勇気もなくて。彼女が帰って来るまでの間、帰ろうかとも思ったんだけど、
二階の彼女の部屋に行ってウロウロしてました。座ってられない。別に何かを探す訳じゃない。
でも、押入れの引き戸を開けたりして、中を覗いて…最低ですね、俺。人の部屋に何やってんだか。
暇…と言うか、人間、奇行に走る瞬間ってあると思う。心神喪失。で、ティファニーの袋があって。
思い出しました。あの時の、中身はどこだろう、と。探しました…。
458 :えっちな21禁さん :04/04/22 00:28 ID:7VLLOLec
ありませんでした。人の部屋で探し物は疲れます。しかも、バレない様に気を使いながらってのが。
そんな馬鹿な事をしてる内に帰って来ちゃって。車の音にビクつく俺。もう気分は空き巣です。
帰って来た彼女は買い物袋をぶら下げていて、父親もだけど。俺にも持てと言う。渡された瞬間、
彼女の指の指輪が…俺のじゃなくて。つまり、ダイヤ付いてなくて。あ、ティファニー…って直感しました。
その後、バタバタしてたんだけど、俺は指輪の事をさりげなく聞いてみました。その指輪、ティファニー?って。
あ、うん!少し慌ててました。いつも俺の指輪だったからかな。可愛いね!高くなかった?とか聞くと、
ちょっと嬉しそう。自分で買ったの?…俺は無意識に誘導尋問していたと思う。違う違う、友達…って。
何か変な空気を察知したのか、彼女は話題を替えて来て。指輪の話はそれっきり。飯を食べて夜帰りました。
467 :えっちな21禁さん :04/04/22 00:40 ID:7VLLOLec
それからしばらくして、俺は姿を消しました。
正確に言うと、家出、失踪。会社の郵便受けに退職願を突っ込んで、
実家の部屋の俺の家具・荷物はこっそりコツコツと処分してて。
彼女の前から、姿を消しました。4年前の事です。
問い詰める勇気もなくて、何も知りたくなくて。考えると気が狂いそうになって。誰も知らない所に行こう…。
人間不思議な物で、一旦決意すると、不思議と体が動いて。ちょっとルンルンしちゃったり。
とにかく荷造りやら、処分してる時は、妙な充実感に浸ってました。もしかしたら、樹海に
行ってたかも。幸い俺は千葉で寮付きの特別養護老人ホームの介護職員になれて。資格なくてもOKだと。
面接は冷や冷やしました。履歴書の住所は千葉の親戚の住所。職歴も適当。
もう、バレるんじゃないかって。月給の手取り14万円はキツかったけど、体が慣れると
オムツ交換もてきぱき出来て。一年間そんな事をしてました。親には最初、ひたすら謝りまくって、
嘘を付いて、捜索願を出すなとか何とか…警察沙汰にされそうになって危なかったけど。
474 :えっちな21禁さん :04/04/22 00:59 ID:7VLLOLec
理事長先生から源泉徴収だか何だか、とにかく税務で困る事があるから、
住民票を持って来て、寮に移せ…って言われた時は、もうどうしようかと。
俺はDQNを装って、分かりません知りません、確定申告は自分でしますんで、の一点張り。
ま、諦めてくれましたけど。スリリングな人生でした、あの一年間。逃亡者。
476 :えっちな21禁さん :04/04/22 01:01 ID:7VLLOLec
苑では24時間介護のシフトを組んでいて、かなりハードな仕事でした。週休2日でも、寮に篭って、
小さな窓からボーっと空を眺めていたりして。周りはパチンコでいくら負けたとか騒いでいたけど、
俺は淡々と仕事をこなしてた。痴呆のお年寄のオムツ交換、食事介護、シーツ・ベッドの交換、
入浴介助、掃除…それで14万とはちょっとねー。ちょっとした強制収容所です。と言うか俺もよく耐えた。
そんな所で。本当は車もあったんで、もっと遠くへ行きたかったんだけど、あんま金もないし、ガソリン代もちょっと
ケチって、そんな時、日曜日の新聞に折り込まれている求人広告を思い出して…あ、仕事しようと。
すまん、俺は盗みました。人様のお宅のポストに入ってた新聞から、求人広告を抜きました。ゴメンなさい…。
でもねー千葉と神奈川だもん。近いって言えば近いよなw 何度か、もう帰ろう、と思ったよ。
根が屁タレなんで。でも、彼女に格好悪い姿は見せたくなくて。俺的にはかなり格好いい消え方だと思った。
かなり馬鹿でしたけどね。でも、家出って思ったよりも簡単だなーと言う事は分かった。
479 :えっちな21禁さん :04/04/22 01:10 ID:7VLLOLec
相手が来ちゃったんです…。興信所頼むなよ。
親父とお袋には電話で心配するなって散々言い聞かせてあって。
初めは捜索願出す!とか言ってた親父も、まあしばらく頭冷やして来いと。
理由は何も言ってなくて。もちろん彼女の事とかも。ひたすら『家出したくなった』を繰り返してた。
彼女の父親には電話で、実は好きな人が出来ました。婚約は解消させて下さい、と。
ヤケクソでした。他にいい嘘が思いつかなくて。どうして?何で?って彼女の母親から
問い詰められると、本当に辛い。何か喋らないと、なんて、変な気を使うのは俺の悪い所かな。
『馬鹿野郎!ふざけるな!俺はテメェを一生許さねぇからな!!!』
…凄い迫力でした。とにかく、好きな人が出来た…今、その子と暮らしてる、って。嘘付きました。
しばらく携帯が止まらなくて、速攻解約ですよ。彼女からも着信入るけど、話せなくて。
483 :えっちな21禁さん :04/04/22 01:22 ID:7VLLOLec
後々、親父から『お前駆け落ちしたのか』とツッコミが。違う違う、あれ嘘…って言っちゃいました。
親ってのはありがたいもので、何となく察してくれたみたい。見えない所で彼女の家と、俺の間に
立ってくれてたらしい。一番世話になったのは仲人さんでした。会社に謝りの電話をしたんです。
彼女が出たらどうしよう…なんて恐怖もあったんですけど、取り合えずケジメはつけないと。
俺は声色を変えて電話しました。馬鹿だな俺…。幸い別の人が出てくれたんですが。
課長様に代わって下さい…で、繋がりました。本当は、この人にも適当に嘘を付くつもりだったんだけど。
『彼女に代わるから待っててくれ』『いや、代わらなくて結構です』『どうして?』『いや、あの…』
『何があった?』…こんな感じで、つい色々と喋っちゃって。でも、彼女が浮気とか、そんな事は言わなかった。
やっぱり嘘を付いたんだけど、自分自身に不安がある、少し間をおきたい、すいません…って。
『そうか…ま、仕方ないよな、待ってるよ』 その一言に、ポロポロ泣いてました。兄貴肌のいい人です。
486 :えっちな21禁さん :04/04/22 01:30 ID:7VLLOLec
俺は働きながら、もしかして俺は早とちりしたのかな、鬱だったのかな、妄想だったのかな…と、
色々考える様になっていて。今までの、と言うか、あの出来事全てが夢の様な気がして来て。
全く違う世界に放り込まれた、そのショックで、健忘症にかかったのかも。全部、本当に
遠くの出来事の様な錯覚がして。アクアラインを跨げばすぐの距離なのにね。
彼女の誕生日が近くなって、元気かな…なんて感傷に浸る余裕もない日々。日々是決戦、
ウンコとの格闘の毎日です。でも、カレーは食えました。ウンコいじった後にカレーが食えなくなる
ってのは俗説、迷信ですねアレ。ウンコの話題で申し訳ない。
アナウンスで珍しく、俺の名前を呼んでます。お客様がお見えです…と。
殆ど入居者のご家族しか来ない、この苑に。親父かな、と一瞬嫌な気分になりました。
住所は教えて無かったんで、調べて来やがったか馬鹿が…と。
488 :えっちな21禁さん :04/04/22 01:33 ID:7VLLOLec
彼女でした。
「久し振り」
ちょっと笑ってました。
「急にいなくなってビックリしたよー」
やっぱりこの子、可愛いです。
「ゴメンな…」
俺、謝っちゃいました。
492 :えっちな21禁さん :04/04/22 01:38 ID:7VLLOLec
『元気だった?』『まあまあ』『ふーん・・・』何か、どうでもいい会話でした。
あまり覚えてません。お互い、言葉が見つからなくて、特に彼女は多分、
俺との言葉を繋ぐのに必死だったのかも。俺はもう、好きとか嫌いとかじゃなくて、
って、好きでした、やっぱり。どうしようもなく。長過ぎたんですね、一緒にいる時間が。
俺が家出した、失踪したこの一年の何倍も長く居たんだと言う事。
ただ、俺には気がかりな事、と言うか、人が。
「お父さんは?」
「会社だよ」
ちょっと安心しました。居所がバレたらきっと俺、殺されます。と言うか殺されてましたね。
武闘派じゃないけど、やっぱり「彼女のお父さん」ってのは怖いです…。
495 :えっちな21禁さん :04/04/22 01:46 ID:7VLLOLec
「何で分かったの?」
「調べてもらったから…」
探偵さん、もう少し俺をホッといてほしかった。でも、不思議と彼女に対して、
怒りとか、そう言う負の感情は湧かなかった。俺、この子と昔、付き合ってたんだな…そんな感じ。
彼女もごく自然に、あの頃と同じ感じで話し掛けてくれる。それが嬉しかった。
「ゴメン、そろそろ戻るよ」
「うん、待ってる」
496 :えっちな21禁さん :04/04/22 01:46 ID:7VLLOLec
そんな会話だったと思う。戻ると…女の職場ってのは怖いですね、ホント。
介護職員は8割女性なんですけど、このお姉様方が何と言うか…
お前等全員、毎週欠かさず女性セブン買ってるだろ!みたいな、濃い方々で。
『ねえ彼女?彼女?』『へー彼女いたんだァー』『結構可愛いよねー』
…うるせぇよババァ共、口に糞詰めッぞ。
と、心にもない事をそっと心の中に仕舞いましたとさ
スマソ、上げてしまった…
502 :えっちな21禁さん :04/04/22 02:00 ID:7VLLOLec
その日は日勤で、午後4時で上がれました。
でもその間、3時間ぐらい待たせちゃって。仕事が手につかないですよ。気兼ねして。
老人ホームは山の中、と言うかド田舎です。そんな場所へ、彼女はバスとタクシーで来てくれた。
アクアラインを越えて来てくれた。最初は戸惑ったけど、普通に話せました。自分でも驚くぐらい。
来てくれたのは嬉しいけど、寮には止められないから、結局日帰りです。
送ってくよ…って事で、タクシー呼んで、アクアラインのバス亭まで乗せてもらって…
504 :えっちな21禁さん :04/04/22 02:01 ID:7VLLOLec
金谷だったか金田だったか、あのバスターミナル、何も無いんだよねホント。
その周辺を暗くなるまでブラブラしながら、色々と話しをした。 当り障りの無い話だったけどね。
あんなに悩んで、別れたつもりだったのに、いい雰囲気になってたと思う。 別れ…って言っても、
俺が勝手に消えただけだったのかも知れないけど。最後にバスに乗り込む直前、
『また来るね』『いや、俺、そろそろ帰るかも』『ホント?』…そんな会話を交わして。
バスが見えなくなるまで見送りました。その後、急に泣けてきて。もう、このまま苑辞めて帰ろうかな、なんて。
あのバス、走ったら追いついて乗せてくれるかな、とか。彼女と一緒に帰りたくなった。
今まで抑えていたホームシックが一気に来たんだと思う。
509 :えっちな21禁さん :04/04/22 02:11 ID:7VLLOLec
結局、それからしばらくして俺は帰りました。
理事長先生にもお礼を言って、何故か励まされたけど。ちょっとした更正施設と言うか、
貴重な一年だったと思う。俺が言うのも何だけど、自分自身をかなり磨けた気がする。
今まで、何でも中途半端で、上手く言えないけど、ダメだなーって感じだったけど。
愛の貧乏脱出大作戦…あんな感じの一年でした。そんなに為になったかは分からないけど。
家に帰るとおかえりー…普通の応対でした。親子の感動の再会、なんてものはなく。
『車は?』『あー』『あー、じゃなくてよ』『ゴメン…』
俺の車は1月の大雪の日、田舎の風俗店の前でスリップして、駐車していたワゴン車にドーン。
…逃げました。で、廃車に。幸い、俺の車は追突した後も走ってくれて。かなりヤバかった。
こんな所で懺悔するなって感じだけど、必死で山道を逃げました。ワゴン車は…前がグチャっと。
俺は今でも信じてます、あれは、あのワゴンは元々ガードレールに追突して止まっていたんだと。
その後、俺がオカマ掘っちゃったんだと。そう信じてます。俺は無罪…。
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